第7回AIDS文化フォーラムin京都にて、アノニマス・ピープル上映


 第7回AIDS文化フォーラムin京都の分科会プログラムにて、アノニマス・ピープル上映会を行います。

「アノニマス・ピープル上映会」
(NPO法人 アパリ 木津川 ダルク)

日時: 9月30日(土) 17:00-18:30
会場: 同志社大学新町キャンパス 尋真館
参加費: 無料

『アノニマス・ピープル』はアメリカで2000年頃に始まった新しい回復擁護運動(New Recovery Advocacy Movement)を紹介した長編ドキュメンタリー映画(約90分)です。

松本俊彦先生推薦
様々な年代、様々な立場の回復者たちが力強く語る言葉やその表情をみているだけで、胸が熱くなってきます。

 

仲間たちよ、共に歴史を作ろう!(Let’s Go Make Some History!)

現在、アメリカのアルコール/薬物依存症者約5千万人のうち、半数弱の2300万人が回復に向かっているという驚くべき現実を伝えています。なぜ驚くべきことなのか。それは、この割合を日本に当てはめれば、日本には50万人ぐらいのアルコール/薬物依存症回復者がいることになりますが、実際は数万人に過ぎず、実に多くの生命がこの病気によって失われているからです。

当然に、それはどうやって実現したのか、アメリカで何が起こっているのかという疑問が生まれます。この映画はその答えを教えてくれます。

アメリカの依存症の世界でいま起きつつある変化の中心には、新しい回復擁護運動が存在しています。この運動の主な担い手は、アルコール/薬物依存症の回復者たち。AA(アルコホーリクス・アノニマスの略称。飲酒問題のグループ)やNA(ナルコティクス・アノニマスの略称。薬物問題のグループ)などのアノニマス(無名のという意味)の当事者グループだけでなく、それ以外の様々な当事者グループのメンバーや、依存症回復/治療センターの人々などが多数含まれています。

この運動の始まりはいまから3、40年前に遡ります。AAなどのアノニマスグループは1935年の創設以来、たくさんの回復者を輩出してきました。現在、アメリカとカナダだけでも110万人のAAメンバーがいます。ところが1970年代になって、アメリカの当事者運動は大きな困難に陥ります。いわゆる「薬物戦争」の始まりです。これはアメリカ政府が始めた薬物政策ですが、これにより、依存症に対する偏見と差別が再びアメリカ社会に広がり始めました。AAなどの当事者運動が数十年かけて築き上げた回復の成果が掘り崩され始めたのです。

この危機にあって、AAなどのアノニマスグループのメンバーの中から、この反動に抗する動きが必要であると考えた人たちが現れました。彼らは、本名を名乗らなくてよいというアノニマスの原則は、飲酒や薬物をやめたばかりのたくさんの仲間をグループにつなげることに成功したけれど、同時に、プログラムのおかげで回復した自分たちが「アノニマス」を口実に、自分が依存症の回復者であることを社会に隠していた、それが偏見と差別の復活を許してしまった大きな要因になっていることに気づきました。彼らは自分の中に依存症は恥ずべきものであるという意識を発見し、それは依存症についての社会の無理解、偏見を内在化し自分にスティグマ(烙印)を押した結果であることに気づいたのです。

新しい回復擁護運動は《社会の無理解、偏見》と《回復者の中の恥》の悪循環を断ち切るには、自分たち自身が社会に顔を出し、声をあげ、偏見、差別、スティグマを取り除いていくことだと考えています。

「いまアメリカはわくわくするような時代を迎えようとしている」。これは新しい回復擁護運動のリーダーの一人、ウィリアム・ホワイト氏の言葉ですが、私たちもこの映画にインスパイアされて、「いま日本はわくわくするような時代を迎えている」と言えるような変化を起こしたいものです。

注:新しい回復擁護運動は回復のプログラムではなく、様々な回復のプログラムを提供しているグループや施設などにつながりやすくするための、言い換えれば回復しやすい社会を作るための運動です。この運動にアノニマスグループのメンバーが参加するときは、アノニマスの伝統に基づいて自分が属するグループは明かさず、回復した一市民として参加します。

依存症からの回復研究会/(社)セレニティ・プログラムより

松本俊彦さん(国立精神・神経医療研究センター病院、精神科医)

感動の動画です。様々な年代、様々な立場の回復者たちが力強く語る言葉やその表情をみているだけで、胸が熱くなってきます。
言い回しは違っても、登場する回復者たちのメッセージは共通し、一貫しています。
それは、「依存症は道徳の問題ではなく、健康問題であり、絶望すべき不治の病ではなく、回復可能な慢性疾患」というものです。
この動画を観て、私は改めてA.Aが大切にしてきた「匿名性」という伝統の意味を考える機会を得ました。
なるほど、A.A.の「匿名性」の伝統は、自己中心的な行動を防ぎ、ミーティングを安全な場とするのには不可欠だが、もしかするとその伝統が、依存症からの回復や回復者のすばらしさを広く知ってもらう機会を奪ってきたのかもしれない……。
おそらく弊害の一端が、昨今の芸能人の薬物事件報道なのでしょう。
たとえば、個人に対する激しい中傷や無責任な決めつけ的な報道がその典型です。
こうした心ない報道が、依存症者本人や家族を傷つけ、絶望させ、治療につながる気力を奪ってしまうのです。
この動画全編には、回復者たちの「今こそ声を上げるべきときだ」という熱い思いがみなぎっています。
決して「匿名性」をやめたのではありません。
ただ、匿名と沈黙は違うことに気づいたのです。
ぜひこの動画を多くの人に観ていただきたいです。
そして一人でも多くの人に、依存症が不治の病ではなく、回復可能な慢性疾患であることを知ってほしいと願っています。

今成知美さん(アスク・ヒューマン・ケア代表取締役)

2016年5月31日、アルコール健康障害対策基本法にもとづく基本計画ができて、依存症の偏見を取り除く社会啓発が重点課題に入りました。
何かいい方法はないか、考えていました。
そんなとき、「アノニマス・ピープル」というアメリカ映画を観るチャンスを得ました。
「回復の姿を社会に見せればいいのさ!」この映画は、答えをくれました。
原点に戻れた気がしました。
多くの人が依存症という病気で死ぬ。
罪ゆえではない。
弱さゆえでもない。
病気で死んでいるんだ!
がんや糖尿病なら手厚いケアが受けられる。
でも依存症はそうじゃない!
黙っていないで、依存症は回復できる病気なのだと、外に出て自分自身が伝えよう!
世間が、回復している依存症者に気づけば、みんなの意識が変わるさ。
登場人物たちは、異口同音に語ります。
臆せず真実を語る、勇気と決意に満ちています。
歴史上の人物である、AA創始者のビルとボブ、依存症啓発運動のマーティ・マン、ヒューズ法の制定に尽力したヒューズ上院議員がスピーチしている場面も出てきます。
歴史の一コマに立ち会ったような感動を得られます。
それにしても、さすがアメリカです。
回復メッセージ・トレーニングという研修があるし、16州に回復専門の高校があり、20州の大学に回復プログラムがあるって!?
すごすぎます。
回復を語る若者たちの顔が、輝いています。
居場所を見つけたんですね。
全体を貫いているのは、回復の共同体意識です。

大事なことを伝えている映画です。
ちょっと長いですが、ぜひご覧ください。

松下年子さん(横浜市立大学医学部看護学科 教授)

回復者が顔と声を出すというコンセプトと、政策変革(回復者支援制度の実現、救済)、コミュニティとの統合といった斬新なテーマに魅了されました。
素晴らしいですね。
また、若者へのアプローチ、それも依存症者の子どもへケアではなく、依存症の若者へのケアや学校の取り組み(日本ではまだまだではないかと思うのですが)については、それだけアメリカではアディクション問題が深刻化しているということかしらとも思いました。
でも日本も近い将来、そうなる可能性は高いですよね。確実にアメリカの後を追っているような気がします。

また、DVDの中で一貫して提示されていたKey wordsが、恥、スティグマ、社会の責任だったように思います。
改めて、依存症が社会的文脈をもった複雑な病であること、人間や社会の本質に迫る病であることを確認しました。
登場者ににじみ出ている朗らかさとエネルギーがとても素敵です。

依存症セミナー in 神戸

依存症は治療が可能です。
悪人ではなく、病人なのです。
そのリハビリには地域の「理解と思いやり」
そして時間が絶対必要不可欠なのです。

依存症セミナー in 神戸
薬物依存症に対する理解と地域で私たちにできること

薬物依存症という病は、これまでは自分たちとは関係のない世界の話だったかもしれません。実際に支援する立場の人々を混乱させ、回復することなど不可能だと思ってしまうのも無理はない。昨今、薬物依存症回復支援が、少しずつ理解されてきた。それは回復者として社会に貢献するロールモデルが増えてきたからといっても過言ではない。その大きな理由として、「社会からの理解」が昔より進んできたからでもある。要するに社会の理解と思いやりが、回復率に一番影響を及ぼしている。地域で苦しみを隠して生きる薬物依存症者とその家族。そんな人々が助けを求めることができる社会。回復の街 神戸。私たちはこの地で回復を伝えていきたい。

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10月14日(土)13:30-16:30
司法の視点から
龍谷大学 法学部教授 石塚 伸一 氏
アパリ 木津川ダルク 加藤 武士

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11月11日(土)13:30-16:30
地域でつながるとは
ひょうごセルフヘルプセンター 中田 智恵海 氏
神戸ダルクビレッジ 梅田 靖規 氏

 

会場:神戸市総合福祉センター4F
兵庫県神戸市中央区橘通3-4-1
アクセス:
・神戸高速鉄道 高速神戸駅より徒歩2 分
・神戸市営地下鉄 大倉山駅より徒歩3 分
・J R 神戸駅より徒歩1 0 分 近隣駐車場あり

お問合せ:神戸ダルク 078-224-4244(梅田)

一般社団法人 神戸ダルク ヴィレッジ
〒651-0068 神戸市中央区旗塚通1-1-20 長坂ハイツ2F
TEL 078-224-4244 FAX 078-219-9741 9:30~17:30
ウェブサイト www.kobedarc.org/
メール kobe.darc@gmail.com

このセミナーは神戸市社会福祉協議会フェスピック事業助成によって行われています。


講師プロフィール
石塚 伸一(いしづか しんいち)

1954 年東京都生まれ。中央大学大学院法学研究科博士後期課程退学(法学修士)。九州大学法務研究科より博士(法学)の学位授与。北九州市立大学法学部教授を経て、現在、龍谷大学法学部教授。弁護士


加藤 武士(かとう たけし)

1983 年 大麻を吸引、以後10 年近くあらゆる薬物を使用。精神科病院にも10 数回の入院歴を持つ。 1992 年 薬物依存回復者と出会い、新しい生き方を始める。京都マック、横浜ダルク、大阪ダルク、沖縄ダルクを利用する。 2000 年 大阪ダルク就職 2003 年 京都市にて京都ダルク設立。2013 年 アパリ・ウエスト及び、木津川ダルクを新設

中田 智恵海(なかだ ちえみ)
ひょうごセルフヘルプ支援センター代表。1944 年、大阪市生まれ、神戸市在住。神戸女学院大卒。関西大大学院博士課程修了。96 年、武庫川女子大助教授。2005 年佛教大社会福祉学部教授を経て2014 年より現職。著書に「セルフヘルプグループ―自己再生を志向する援助形態」など。

梅田 靖規(うめだ やすのり)
2007 年薬物依存症にて、茨城ダルクにてリハビリ開始。同年ダルク職員として活動開始。職員をしながら、大検に合格し、通信大学で心理学を専攻。2011 年より、京都・木津川ダルクでの非常勤を経て、アリゾナ州治療共同体アミティ及びデイトップにて、3ヶ月のトレーニングを経験。2014年より、「アジア太平洋地域アディクション研究所」にて、研究員及び「フィリピンプロジェクトチーフ」として、フィリピン メトロマニラを中心とした貧困層依存症支援での政府との連携調整及び、フィリピン全土のピアネットワーク構築に従事。帰国後神戸にて活動を開始し、2016 年7 月 神戸ダルク ヴィレッジ」の開設に至る。精神保健福祉士 双子の二児の父

アパリウエスト家族教室2017年4月からの予定

アパリウエスト家族教室-チラシ

アパリウエストでは、薬物依存の問題で困っている家族を対象とした家族教室を開催します!

アルコール依存・ギャンブル依存・インターネット依存など他の依存問題を持つ家族も対象としております。

次回開催日は、9月19日(火)13:30-15:30
場所:おおさかドーンセンター 4階中会議室

薬物依存に対する正しい知識を得ること、家族の対応について学ぶこと、また心身ともに疲れている家族が健康を取り戻すことを目的としています。薬物の問題で苦しんでいるご家族のご参加をお待ちしております。

連続8回で1クールの講座です。講義に加えてグループワークやロールプレイなど行っていきます。全8回ですが、どこの回からも参加できますし、1クール終了しても引き続きご参加いただけます。