2014年木津川ダルク開設記念フォーラムでの小沼先生の報告

愛の回復支援
~障がい者の「居場所」と「出番」の創生プロジェクト~
更生保護法人・社会福祉法人・農業生産法人
『薬物版 広島べてるの家』
設立・運営の構想について

昨日より小沼杏坪先生のことを思いだしている。
もう亡くなられて5年が過ぎた。
2013年に京都ダルクを辞めたとき、私の進退を心配してくださり瀬野川病院での雇用を提案してくださった。そのお声掛けは、心強く、一歩を踏み出す勇気にもなった。
2014年木津川ダルクの開設記念で小沼先生が報告してくださった資料を見返している。
資料より【基本理念】いつでも、どこでも、だれでも、扉をたたく全ての人に明るく温かい医療の手を差し伸べる。
小沼先生の構想を一緒に実現したかったな。いま、この構想を一部実現するために動き出す。

 

260615 木津川ダルクフォーラムにおける『薬物版広島べてるの家』>構想(小沼最終・最終原稿)

分かちあう事、そして共感できる仲間が私達にできて心より感謝

薬物依存症のタケヤンです。

私は17歳からシンナー、覚醒剤他色々な薬物を使用しながら生きてきました。

薬を使いだした目的は好奇心からですが、歳を重ねるごとに使い方が変化し、その年齢に合わせて薬は私に対して様々な事をコントロール不足にしていきました。今もなお、クリーンでいても自分自身をコントロールできない様に操り、精神的にも肉体的にも不自由を感じ、苦しい、辛い、と思う時間が一日に何度も襲ってきます。そんな状況に陥ると、自分を取り戻すのに必死になり、疲労困憊してしまいます。不眠症にも悩まされ、うまく眠れない夜は不安と戦って疲れ切ってしまいます。精神薬や睡眠薬を服用しても効果がないと感じることが多い為、困り果てている状況の中で日々生きています。

それでも私は今回が薬物を断つための最後の与えられたチャンスだと思っています。 また薬物を使う自分に戻り、自分自身をコントロール不可能にするのか、回復のチャンスを手放さずにコントロールできるようになるのか・・・。少なくともこのニュースレターを木津川ダルクのタケシさんに頼まれて受けたという事は、頼まれたから書くというより、今の私の気持ちを文字にすることにより、自分自身を見つめ直すチャンスを手渡してくれたと受け止めており、心より感謝しています。

うまく皆様に私の今の心境が伝わるか分かりませんが、クリーン4カ月の私の今を少しでも共感していただけたら幸いです。

私は覚醒剤において6度の逮捕を繰り返し、今回6度目の逮捕の後、実刑2年、執行猶予5年、保護観察付きの処分を受けている最中です。今は木津川ダルクに通所しながらNAにつながり、ミーティングに参加して回復に向けて日々の生活を送っています。

今まで3度の服役を繰り返す中で、薬物更生施設の事を知ってはいましたが、薬物依存者の集まりの中に入って更生に向けていく事は私にとっては理解できず、そんな所へ行かなくてはならないほど自分自身は落ちぶれていないし、そんな所へ行っても逆にまた薬が欲しくなったり、悪い付き合いが始まって大した効果も得られない、と決めつけていたのでまったく興味が湧きませんでした。そんな状態の中で今日まで薬を使用し、逮捕され、服役を繰り返していく生活でした。仕事は大型車に乗りながら生計を立てていましたが、薬を使用しながらの仕事だったため長続きしなかったり、仕事に対しての一番の後悔は、自ら自営として立ち上げた会社を潰し新築の一軒家を手放し、一家離散になってしまった事です。失ったものは他にも数え切れませんが、すべてにおいて薬物を使用していた事により起きた出来事だと自覚するに到っております。

3度の離婚を繰り返し現在の妻と22年の結婚生活を送っていますが、出会った時から今日まで妻と共に覚醒剤を使用しながらの生活を送り続け、今回私が6度目の逮捕にして妻も一緒に逮捕されるという、恐れていた事態が起きてしまいました。いつかはこうなると分かっていたのに薬をやめられずに過ごしていたのですから、家族・友人・知人に最大の絶望と信用・信頼を失う事も与えたのは言うまでもありません。後悔などという言葉は私達夫婦にはおこがましい言い訳でしかなく、後悔をしたと言い訳するつもりはありません。友人に私達は崖っぷちではなく、崖から落ちてると言われて返す言葉もありませんでした。

今回、保護観察という処分をいただき、観察所から市が行っている薬物更生プログラムに参加してみてはどうですか?と言われました。今回は夫婦二人での逮捕でしたので、今までの様に私一人ならその言葉の真剣な受け止めも浅かったと思いますが、今回は心から薬をやめなくてはならない、と妻と心に決めたので私はこのプログラムに参加しようと決めました。プログラムに参加して私の心がざわつきました。みんな楽しく過去の話や今の心の変化、そして伝わりやすく仲間同士で語り合い、初対面の私に対して何の壁もなくすんなり受け入れてくれ、私の話を真剣にそして共感しながら聞いてくれました。

そしてプログラムが終わった時に声をかけてくれたのが、今私が通所している木津川ダルクの施設長のタケシさんでした。気さくな感じに「今どこかに繋がっていますか?」と言ってくださり、何も分からない私に一度私の施設に来てみませんか?と声を掛けて下さりました。その言葉により後日、木津川ダルクに訪れました。そして私の身の上話をすると、タケシさんは、自分自身が回復する気持ちがあるのならこの施設に足を運んで下さい。そして私に「あなたは実刑にならないし、執行猶予になるし助かります。実刑に行っているよりも施設に通った方が1日も早く回復に向かって歩けますし、他にも回復への道がたくさんありますので、NAのミーティングにも通ってみて下さい。お金も要らないし、あなたが回復したい一心で行動すれば、今までどうにもならなかった事が一つ一つ解決していきます。」と言って下さりました。こんな私に困った顔一つ見せずに話を聞きながら受け答えて下さった事が今も忘れられません。

それから私は施設へ通所しNAミーティングの参加が始まりました。私の裁判に対しての上申書をタケシさんが書いて下さり、裁判当日には、タケシさんをはじめたくさんのNAの仲間がわざわざこんな私の為に、裁判所に足を運んでくれたこ事に無償の愛と優しさを感じました。感謝の気持ちで一杯です。

今、執行猶予5年、保護観察処分、クリーン4カ月です。今までの私達夫婦には4カ月薬をやめる事の出来なかった日数です。これほどダルクやNAミーティングのおかげでクリーンが保たれて健全に生活していられることに喜びを感じています。

今は薬を止められたとは思えませんが、今日だけで精一杯の私達ですが、NAミーティングに参加し続けつながり続けたいと思う気持ちは、回復に向けて歩いている事の証です。

木津川ダルクのタケシさん、ダルクの仲間、NAの仲間が私達を心から受け入れてくれている事が今、私達がクリーンでいられる大きな助けとなっています。まだNAの原理やステップについては理解に欠く所はありますが、ミーティングに通い続けていればクリーンでいられる事は本当だと思います。私たちには最高の治療法なのです。この先、夫婦二人でクリーン生活を続け、タケシさんにこの姿を見て喜んでいただきたいと思っております。分かちあう事、そして共感できる仲間が私達にできて心より感謝しています。

ありがとうございました。

アパリ東京本部ニュースレター