茨木市人権学習会を終えて

昨日は、茨木市人権学習会での講演をさせていただきました。
参加者は少なめでしたが、質疑応答の時間も押すことなくさまざまなご質問にも答えることができました。

少しづつ依存者の回復を支えられる地域社会になっていく事を願っています。

茨木市ではこれまでも何度か呼んでくださっておりありがたい限りです。

当日資料
2017.09.13_茨木人権学習会_印刷用6_2

日頃よりNPO法人アパリ 木津川ダルクを応援してくださっている皆様へ

私たちの大切なことは組織であって組織でない。非営利ですから利益を上げることを目的としませんが、必ずしも無償のボランティアではありません。専従のスタッフを雇用し、会費で支える会員がいて、個人や団体のご寄附や民間の助成金、行政の委託事業なども得て、薬物依存者回復支援サービスを提供していくことが役割だと考えています。

「アパリウエスト・木津川ダルク」は、そのような薬物依存者を、家族も含めて支援するために、医療機関や司法機関と連携し、今後、障害福祉サービス事業における生活訓練施設設置を進めます。

どうか、新たな活動を支えていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

クレジットカードで、ご寄付をしていただけます。
APARI WEST SHOP


設置場所
京都府南部

障害福祉サービス事業における生活訓練施設設置初期費用
総額 500万円

【内訳】
物件借上げ費用 100万円
設備整備費用 150万円
障害福祉サービス事業指定報酬による運営までの維持費 200万円 (約4ヶ月)
予備費 50万円

第1期募集期間
2017年9月1日~12月31日

他の入金方法
郵便振替
(口座番号)00910 – 2 – 202402
(名義)木津川ダルク


 

第7回AIDS文化フォーラムin京都にて、アノニマス・ピープル上映


 第7回AIDS文化フォーラムin京都の分科会プログラムにて、アノニマス・ピープル上映会を行います。

「アノニマス・ピープル上映会」
(NPO法人 アパリ 木津川 ダルク)

日時: 9月30日(土) 17:00-18:30
会場: 同志社大学新町キャンパス 尋真館
参加費: 無料

『アノニマス・ピープル』はアメリカで2000年頃に始まった新しい回復擁護運動(New Recovery Advocacy Movement)を紹介した長編ドキュメンタリー映画(約90分)です。

松本俊彦先生推薦
様々な年代、様々な立場の回復者たちが力強く語る言葉やその表情をみているだけで、胸が熱くなってきます。

 

仲間たちよ、共に歴史を作ろう!(Let’s Go Make Some History!)

現在、アメリカのアルコール/薬物依存症者約5千万人のうち、半数弱の2300万人が回復に向かっているという驚くべき現実を伝えています。なぜ驚くべきことなのか。それは、この割合を日本に当てはめれば、日本には50万人ぐらいのアルコール/薬物依存症回復者がいることになりますが、実際は数万人に過ぎず、実に多くの生命がこの病気によって失われているからです。

当然に、それはどうやって実現したのか、アメリカで何が起こっているのかという疑問が生まれます。この映画はその答えを教えてくれます。

アメリカの依存症の世界でいま起きつつある変化の中心には、新しい回復擁護運動が存在しています。この運動の主な担い手は、アルコール/薬物依存症の回復者たち。AA(アルコホーリクス・アノニマスの略称。飲酒問題のグループ)やNA(ナルコティクス・アノニマスの略称。薬物問題のグループ)などのアノニマス(無名のという意味)の当事者グループだけでなく、それ以外の様々な当事者グループのメンバーや、依存症回復/治療センターの人々などが多数含まれています。

この運動の始まりはいまから3、40年前に遡ります。AAなどのアノニマスグループは1935年の創設以来、たくさんの回復者を輩出してきました。現在、アメリカとカナダだけでも110万人のAAメンバーがいます。ところが1970年代になって、アメリカの当事者運動は大きな困難に陥ります。いわゆる「薬物戦争」の始まりです。これはアメリカ政府が始めた薬物政策ですが、これにより、依存症に対する偏見と差別が再びアメリカ社会に広がり始めました。AAなどの当事者運動が数十年かけて築き上げた回復の成果が掘り崩され始めたのです。

この危機にあって、AAなどのアノニマスグループのメンバーの中から、この反動に抗する動きが必要であると考えた人たちが現れました。彼らは、本名を名乗らなくてよいというアノニマスの原則は、飲酒や薬物をやめたばかりのたくさんの仲間をグループにつなげることに成功したけれど、同時に、プログラムのおかげで回復した自分たちが「アノニマス」を口実に、自分が依存症の回復者であることを社会に隠していた、それが偏見と差別の復活を許してしまった大きな要因になっていることに気づきました。彼らは自分の中に依存症は恥ずべきものであるという意識を発見し、それは依存症についての社会の無理解、偏見を内在化し自分にスティグマ(烙印)を押した結果であることに気づいたのです。

新しい回復擁護運動は《社会の無理解、偏見》と《回復者の中の恥》の悪循環を断ち切るには、自分たち自身が社会に顔を出し、声をあげ、偏見、差別、スティグマを取り除いていくことだと考えています。

「いまアメリカはわくわくするような時代を迎えようとしている」。これは新しい回復擁護運動のリーダーの一人、ウィリアム・ホワイト氏の言葉ですが、私たちもこの映画にインスパイアされて、「いま日本はわくわくするような時代を迎えている」と言えるような変化を起こしたいものです。

注:新しい回復擁護運動は回復のプログラムではなく、様々な回復のプログラムを提供しているグループや施設などにつながりやすくするための、言い換えれば回復しやすい社会を作るための運動です。この運動にアノニマスグループのメンバーが参加するときは、アノニマスの伝統に基づいて自分が属するグループは明かさず、回復した一市民として参加します。

依存症からの回復研究会/(社)セレニティ・プログラムより

松本俊彦さん(国立精神・神経医療研究センター病院、精神科医)

感動の動画です。様々な年代、様々な立場の回復者たちが力強く語る言葉やその表情をみているだけで、胸が熱くなってきます。
言い回しは違っても、登場する回復者たちのメッセージは共通し、一貫しています。
それは、「依存症は道徳の問題ではなく、健康問題であり、絶望すべき不治の病ではなく、回復可能な慢性疾患」というものです。
この動画を観て、私は改めてA.Aが大切にしてきた「匿名性」という伝統の意味を考える機会を得ました。
なるほど、A.A.の「匿名性」の伝統は、自己中心的な行動を防ぎ、ミーティングを安全な場とするのには不可欠だが、もしかするとその伝統が、依存症からの回復や回復者のすばらしさを広く知ってもらう機会を奪ってきたのかもしれない……。
おそらく弊害の一端が、昨今の芸能人の薬物事件報道なのでしょう。
たとえば、個人に対する激しい中傷や無責任な決めつけ的な報道がその典型です。
こうした心ない報道が、依存症者本人や家族を傷つけ、絶望させ、治療につながる気力を奪ってしまうのです。
この動画全編には、回復者たちの「今こそ声を上げるべきときだ」という熱い思いがみなぎっています。
決して「匿名性」をやめたのではありません。
ただ、匿名と沈黙は違うことに気づいたのです。
ぜひこの動画を多くの人に観ていただきたいです。
そして一人でも多くの人に、依存症が不治の病ではなく、回復可能な慢性疾患であることを知ってほしいと願っています。

今成知美さん(アスク・ヒューマン・ケア代表取締役)

2016年5月31日、アルコール健康障害対策基本法にもとづく基本計画ができて、依存症の偏見を取り除く社会啓発が重点課題に入りました。
何かいい方法はないか、考えていました。
そんなとき、「アノニマス・ピープル」というアメリカ映画を観るチャンスを得ました。
「回復の姿を社会に見せればいいのさ!」この映画は、答えをくれました。
原点に戻れた気がしました。
多くの人が依存症という病気で死ぬ。
罪ゆえではない。
弱さゆえでもない。
病気で死んでいるんだ!
がんや糖尿病なら手厚いケアが受けられる。
でも依存症はそうじゃない!
黙っていないで、依存症は回復できる病気なのだと、外に出て自分自身が伝えよう!
世間が、回復している依存症者に気づけば、みんなの意識が変わるさ。
登場人物たちは、異口同音に語ります。
臆せず真実を語る、勇気と決意に満ちています。
歴史上の人物である、AA創始者のビルとボブ、依存症啓発運動のマーティ・マン、ヒューズ法の制定に尽力したヒューズ上院議員がスピーチしている場面も出てきます。
歴史の一コマに立ち会ったような感動を得られます。
それにしても、さすがアメリカです。
回復メッセージ・トレーニングという研修があるし、16州に回復専門の高校があり、20州の大学に回復プログラムがあるって!?
すごすぎます。
回復を語る若者たちの顔が、輝いています。
居場所を見つけたんですね。
全体を貫いているのは、回復の共同体意識です。

大事なことを伝えている映画です。
ちょっと長いですが、ぜひご覧ください。

松下年子さん(横浜市立大学医学部看護学科 教授)

回復者が顔と声を出すというコンセプトと、政策変革(回復者支援制度の実現、救済)、コミュニティとの統合といった斬新なテーマに魅了されました。
素晴らしいですね。
また、若者へのアプローチ、それも依存症者の子どもへケアではなく、依存症の若者へのケアや学校の取り組み(日本ではまだまだではないかと思うのですが)については、それだけアメリカではアディクション問題が深刻化しているということかしらとも思いました。
でも日本も近い将来、そうなる可能性は高いですよね。確実にアメリカの後を追っているような気がします。

また、DVDの中で一貫して提示されていたKey wordsが、恥、スティグマ、社会の責任だったように思います。
改めて、依存症が社会的文脈をもった複雑な病であること、人間や社会の本質に迫る病であることを確認しました。
登場者ににじみ出ている朗らかさとエネルギーがとても素敵です。