本日、真宗大谷派保護司会役員学習会にて、講師としてお話しさせていただく貴重な機会をいただきました。テーマは「さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし~薬物問題を持つ人の回復支援~」です。

会場には、日々対象者の方々と向き合い、自らのあり方を問い続けておられる保護司の皆様が集まり、私にとっても大きな学びと気づきをいただく、深く濃密な時間となりました。
「さるべき業縁」と向き合う
講演の冒頭でお話ししたのは、宗祖・親鸞聖人の「さるべき業縁のもよおせば、いかなるふるまいもすべし」というお言葉です。
「自分は絶対に悪いことなどしない」と思っていても、縁(条件)さえ整えば、人間はどのような振る舞いもしてしまう。私は、この人間の「弱さ」を認めることから、真の回復が始まると信じています。私自身の薬物依存という過去も、当時の孤独や生きづらさといった「悪い縁」が重なった結果でした。依存症は意志の弱さではなく、耐えがたい現実を生き抜くための「自己治療」でもあったのです。
12ステップと真宗の教えの親和性
今回、参加者の皆様から特に多くの共感をいただいたのが、「NA(ナルコティクス アノニマス)12ステップ」と「真宗の教え」の共通点です。
• 無力の実感と自力無功:自分の力ではどうにもならないと「降伏」すること。
• 他力本願(ハイヤーパワー):自分を超えた大きな力(阿弥陀如来)に身を委ねること。
• 業の直視:自分のあり方を正直に問い返し、棚卸しをすること。

これらは、依存症からの回復を目指す当事者の歩みと、お念仏に生きる保護司の皆様の精神性が、見事に重なり合う部分でした。
最初の10分、たわいのない雑談の力
講演では、現場での具体的な関わり方についても触れました。私が大切にしているのは、面接の最初の10分、「たわいのない雑談」です。
「昨日何食べた?」「最近どんな感じ?」といった何気ない会話を通じて、「この人には本音を話しても大丈夫だ」という安心感を持ってもらうこと。
補足
この心理的な安全性が、マズローの欲求階層でいう「安全の欲求」を満たし、その後の回復の質を大きく左右します。

螺旋階段を共に歩む
依存症からの回復は、ゴールのある競争ではありません。一進一退を繰り返しながら、ゆっくりと登っていく「螺旋階段」のようなプロセスです。

講演後、役員の方から「もっと話を聞きたかった」という温かいお言葉をいただき、胸が熱くなりました。私自身も、2025年12月に断酒断薬30周年という大きな節目を迎えましたが、今なお、さるべき業縁を生きる一人の人間です。
「病気」ではなく「人間」を見る。
これからも、対象者の方と同じ目線に立ち、希望のある環境を共に創造していきたいと、決意を新たにする一日となりました。
ご参加いただいた皆様、素晴らしい「縁」をありがとうございました。


