福井県高浜町での薬物乱用防止教室、無事終了

昨日と今日にかけての2日間、福井県大飯郡高浜町の小中学校5校で薬物乱用防止教室の講師を務めさせていただきました。
以前はアオリイカ釣りのために度々訪れていた高浜町。懐かしい景色の中、子どもたちの真剣な眼差しに触れ、改めて薬物乱用防止教育の重要性を強く感じました。
今回の講演では、薬物の危険性はもちろんのこと、安易な誘惑に流されないための心構えや、困った時に相談できる場所があることなどを伝えました。子どもたちが薬物のない安全な未来を歩めるよう、今回の学びが少しでも役立つことを願っています。
高浜町の児童生徒の皆さん、先生方、そして関係者の皆様、本当にありがとうございました。

薬物を止めることをやめ、やるべきことをやることにベストを尽くす

薬物依存からの回復:最善を尽くすとは

「薬物を止めることをやめ、やるべきことをやることにベストを尽くす」という表現は、一見すると少し混乱するかもしれません。しかし、これは薬物依存からの回復において非常に重要な考え方を示しています。

簡単に言えば、この言葉は「薬物を断つことそのものをゴールにするのではなく、薬物を必要としない生活を築くために、今できる最善のことをする」という意味です。

なぜ「止めることをやめる」のか?

薬物依存からの回復において、多くの人が「とにかく薬物をやめなければならない」という強いプレッシャーを感じます。もちろん、最終的には薬物を断つことが目標ですが、この「やめること」だけにとらわれすぎると、以下のような落とし穴にはまりがちです。

  • 完璧主義に陥る 少しでも薬物を使ってしまうと「もうだめだ」と絶望し、回復への意欲を失ってしまうことがあります。
  • 焦りや不安の増大 「やめなければ」という強迫観念が、かえってストレスとなり、薬物への欲求を強めることがあります。
  • 一時的な解決策の追求 薬物をやめることだけに集中しすぎて、根本的な問題(なぜ薬物を使ったのか、薬物なしでどう生きていくか)に向き合わないことがあります。

この考え方は、そうした「やめること」への固執を手放し、もっと広い視野で回復に取り組むことを促します。

「やるべきことをやることにベストを尽くす」とは?

これは、薬物を使わないで生活するために、具体的にどんな行動ができるのか、そしてその行動に全力で取り組むことを意味します。たとえば、以下のような「やるべきこと」が考えられます。

  • 専門家のサポートを受ける 医師、カウンセラー、自助グループなど、回復をサポートしてくれる専門家や仲間とつながり、アドバイスや助けを求める。
  • トリガー(誘発要因)を特定し、避ける 薬物を使いたくなる状況、場所、人などを把握し、できるだけそれらを避ける工夫をする。
  • 代替となる活動を見つける 薬物を使っていた時間やエネルギーを、健康的で建設的な趣味や活動、仕事などに振り替える。
  • ストレス対処法を学ぶ 薬物を使わずに、ストレスや困難な感情と向き合うための健康的な方法(運動、瞑想、日記など)を身につける。
  • 生活習慣を整える 十分な睡眠、バランスの取れた食事など、心身の健康を保つための基本的な生活習慣を確立する。
  • 自己認識を深める なぜ薬物に依存したのか、自分の内面と向き合い、根本的な問題の解決に取り組む。

まとめ

「薬物を止めることをやめ、やるべきことをやることにベストを尽くす」とは、薬物を断つことへの過度なプレッシャーから解放され、薬物を使わない豊かな人生を築くために、今できる具体的な行動に焦点を当て、それらを一つひとつ着実に実行していくという回復の哲学です。

これは、失敗しても諦めずに、常に前向きな一歩を踏み出し続けることの重要性を示しています。回復は直線的な道ではありませんが、この考え方を持つことで、より持続可能で意味のある回復を目指すことができるでしょう。

刑事司法における更生支援の課題〜判決が示す矛盾〜

今回の判決は、求刑3年に対し懲役2年2月(未決勾留30日算入)というものでした。これは求刑の約7割に相当し、この種の事案においては「いつもの通り」とも言える判決内容です。

私が情状証人として出廷し、出所後の引き受けと回復支援を行うと証言したにもかかわらず、判決文では「保護監督責任者がおらず、更生環境が整っているとは言えない」とされました。
しかし、このような「更生環境が整っていない」と判断される状況だからこそ、刑の一部執行猶予を付すなどして、社会内での更生を促す機会を与えるべきではないでしょうか? 司法は、単に刑罰を科すだけでなく、被告人が社会に復帰し、健全な生活を送れるよう支援する役割も担うべきです。

現状の司法判断は、具体的な更生支援の可能性を軽視し、抽象的な理由で更生の機会を奪っているように見受けられます。再犯防止という刑事司法の重要な役割を果たす上で、この矛盾は看過できません。より柔軟で現実的な司法判断が求められています。
#刑事司法 #裁判 #薬物 #木津川ダルク
昨年の木津川ダルクの事件が影響を及ぼしているのだろうか。