家族教室 2022年後期予定

アパリウエストでは、薬物依存の問題で困っている家族を対象とした家族教室を開催します!
アルコール依存・ギャンブル依存・インターネット依存など他の依存問題を持つ家族も対象としております。
薬物依存に対する正しい知識を得ること、家族の対応について学ぶこと、また心身ともに疲れている家族が健康を取り戻すことを目的としています。薬物の問題で苦しんでいるご家族のご参加をお待ちしております。
連続8回で1クールの講座です。講義に加えてグループワークやロールプレイなど行っていきます。全8回ですが、どこの回からも参加できますし、1クール終了しても引き続きご参加いただけます。

アパリウエスト家族教室チラシ2022年度後期

薬物が解決してくれると思っていた

薬物乱用防止教育の弊害

1981年(昭和56年)に、「深川通り魔殺人事件」という薬物乱用者による事件が起きた。商店街の路上で、主婦や児童らを包丁で刺し、児童1人と乳児1人を含む4人が死亡、2人が怪我を負った事件です。のちに犯人が覚せい剤の使用があり心神耗弱状態ではあったが無期懲役の判決が言い渡されました。当時は第2次薬物乱用期(第1次乱用期は戦後の昭和20年から29年頃まで)にあり、社会問題として大きく取り上げられることとなり、1980年代の日本民間放送連盟の麻薬撲滅CMで「覚せい剤やめますか? それとも人間やめますか?」というキャッチフレーズをもとに薬物乱用撲滅キャンペーンが大々的に行われました。この、「人間やめますか?」というキャッチフレーズは人権侵害問題でもあります。その後の薬物依存者への廃人やゾンビといった誤ったイメージ植え付けることになり、今も教育機関などでは、一度薬物を使った人間が回復できると知れば薬物を使ってしまうのではないかということで、回復者が薬物乱用防止教育などに関わることを否定的にとらえる教育関係者もいます。

80年代から今日まで続く薬物乱用防止教育の弊害は薬物問題に携わる専門家においても、小学校、中学校、高校、大学と長年教えられてきた「ダメ!絶対!」という洗脳のような刷り込みが基本にあっての薬物問題の解決や支援や医療となっていたのでは上手くいくはずもなでしょう。この薬物や依存に関する誤解や偏見を解くことも大変なことです。2016年(平成28年)には、依存症の治療・回復の関係団体と専門家が「依存症問題の正しい報道を求めるネットワーク」が結成され、誤解や中傷を振りまくのではなく、依存症という病気を正しく伝え、回復を後押しする報道が行われることで世の中の依存症問題が改善されていくことを目指して活動をされています。

 

依存症発病ハイリスク要因

なぜ人は依存症になってしまうのかいう問いへの答えとして、虐待や不適正な養育を体験した人は依存症なるリスクが高いといわれています。また、AC(アダルト・チルドレン)アルコール依存症者のいる家庭で育った人たちや機能不全家庭で育った者の中には、幼少期に虐待を含む様々なトラウマ的出来事を体験しために、思春期以降、生きにくさや対人関係上の問題が表面化し、その結果、アルコールや薬物問題、ギャンブル、暴力、情緒不安定といった精神および行動上の問題を抱える者が少なくありません。実際に全国のダルクを調査したデータからも、中学生ごろまでに暴力を受けた(45.4%)、心が傷つく様なひどいことを言われた(51.3%)、ネグレクトを受けた(20.7%)という者があった。生育歴上の困難を経験している場合も少なくなく、児童虐待や暴力被害の経験者が半数近い。となっており快楽のために使っているというより、傷を癒し、心の痛みを取るために使っている人たちが多いのです。

 

なぜ私たちは、はまりやめることができなくなってしまうのか?

その根底にあるのは孤独感とか疎外感、対人関係の不器用さ、それから経済的な困窮から、お金を手に入れるために違法な事を始めるということもあるでしょう。それは生きづらさとか、生きにくさを感じる世の中になってしまった社会において、自分で解決するために様々なものと出会い、ギャンブルが自分を癒してくれた、もしくはアルコールが自分の気分を変えてくれた、薬物が気分を変えてくれた、そういった体験をかさねていく事になりアディクションを発症してしまうのだろうと思います。また、そういったネガティブな心のありようがまったくない人でさえ、薬物を使い続ければポジティブなもの、健康的なものを失っていく事になりますし、結果的に生きづらさや生きにくさを抱えていくことになります。ただ、ネガティブな心のありようがあったとしても多くの人が様々な出会いにより健康な生き方を手に入れる人もおられます。トラウマやPTSDから抜け出せた人達のレジリエンス(うまく適応する能力やその回復プロセス)に学ぶ必要があるのではないでしょうか。

 

薬物乱用防止からアディクション予防へ

たとえば虫歯をイメージしてもらうといいと思います。虫歯で生まれてくる人はいません。(いるという人がいればごめんなさい)成長の過程できれいな歯が生えてくる。そしてしっかりとした歯磨きの仕方やその頻度を親から教えられたり学んだりします。しっかりと学んだ人は虫歯にならずに成長していけると思うのです。加えて体質もあると思います。口内環境が酸性かアルカリ性かという体質もあるでしょう。ただ朝昼晩とブラッシングをしっかりしていれば虫歯になるリスクは低い。ある日いい加減なブラッシングをするようになってしまえば虫歯になるでしょう。そこで虫歯になったと言うことを叱られるかもしれないと思うと隠そうとしたり、治療にも行かなかったりとなると、虫歯はどんどんと大きくなり重症化していきます。痛み止めを飲んでやり過ごすことはできるが虫歯は進行していきます。いよいよ治療しなければならないとなった時には、差し歯や入れ歯ということになってしまう事になるでしょう。依存症も虫歯と同じようなものです。最初は小さなこころの傷つきや生きにくさ、ネガティブなこころの痛み、そういったものをアルコールや薬物で解決しようとしても根本的な解決にはなりません。心の痛み止めになっているようなもので、少しずつ虫歯のように生きにくさや生きづらさは大きくなっていき、最終的に自分には手に負えなくなってしまいます。時に自ら命を絶ってしまう人も少なくありません。

「虫歯、ダメ!ゼッタイ!」こんな恐ろしい虫歯になるぞという脅しのキャンペーンと対処療法的虫歯治療を行う事だけをしてこなかったように、薬物問題においても依存にならない、進行させないこころのブラッシングや治療、ケアの仕方をしっかり学び実践できるような取り組みが必要と思います。癒されることはだれにとっても迷惑なことではないと思います。そのような仕組みが地域社会にあれば、心の虫歯は減らせるはずです。こころの痛み止めを使う必要もないと思っています。これは家族に期待するだけでは足りません。家族がブラッシングを学べていない、理解していない、子どもとゆったりとかかわる余裕のない家族も多いからです。それはダルクを調査した統計的にもはっきりと出ていて、ダルクに通っている人たちの男性で67%強、女性で72%強が中学までに虐待経験がある。このように自身が抱える問題を人に話せず、解決できずにさまよっているうちに、薬物で気分を変える事を学んでしまった人たちが多くいるわけです。コロナ感染の影響があるといわれても、歓楽街の夜の盛り場に行ったり、パチンコ屋に行ったりすると「開いているから行くのだ」と、他人に責任を転嫁してアディクティブな行動を起こすわけです。仕事も終わろうとする夕方4時半になったらお酒の飲酒欲求が出てきて、「早く5時にならないかなぁ~、どこで飲もうかな」というような人たちもいます。もしくは腹立たしさとか寂しさからお酒や薬物を使う人もいます。こういったことが引き金になり、ふっとアルコールや薬物が使いたくなる。梅干しを見て唾が出るように、意識しているわけでなくて、もっと思考より深いところから渇望が湧き起こってきて、薬物の事を考え使いたくなり使用してしまう。このサイクルを変える必要があります。

薬物依存になってしまうリスクが誰にでもあるのですが、不健康で不健全な関係を持っている人は依存症になるリスクが高く進行も早いでしょう。健康的なつながりを持っている人は薬物を使ったとしても単発的なもので、使い続けることもなくやめていく人も多くおられます。

アディクションの反対はコネクション言われているように、アディクションの反対は正常とか健康ではなく、つながりがあるという事です。別の言い方で依存症とは「孤立の病」とも言われています。私自身も回復の途上で過去を振り返ってみるとやはり在日朝鮮人で、里子に出されて父親は知らない。いじめを受け、家族にも相談できずにいました。家族の中での健康的なつながりも弱く、友だちとのつながりも薄かったのです。つながりの希薄さとか歪さが薬物依存、もしくは他の依存に向かわせるのではないかと考えています。逆に言えば、健康的なつながりがさまざまにあれば、人生が充実していると言えるのではないでしょうか。家族との関係、兄弟、それから友人関係、学校、職場、趣味があるかどうか、ペットを飼っているか、経済的な安定があるか、信仰を持っているか、夢や目標を持っているか、地域でボランタリーな活動や役割があるということが、人生が充実しているといえるし、そうであればまったく薬物なんて使う必要がない。また、間違ったり失敗したりした時によりそってくれる人や癒される居場所が必要ではないでしょうか。私たちはもうアルコールや薬物を使って何かを解決する必要はないのです。

嗜好品大麻合法化の流れ

国内の青少年の薬物犯罪は平成の初めころからは劇的に減っている。平成26年頃から若干大麻が増えてきている。
ただ、平成26年までは危険ドラッグが蔓延していたのでそれを考えると平成20年ごろのす水準に戻ったと言えないか。
諸外国の医療用大麻の合法化、嗜好品大麻合法化による影響も受けて増えてはいくだろう。

平成30年犯罪白書より
平成30年犯罪白書より

 

大麻が全く問題がないわけではない。
カナダ政府のデータでは、10人ひとりが大麻依存になるリスクがあり、少年のころから使っていると6人にひとりが大麻依存になるリスクがある。毎日使っていれば、4人にひとりが大麻依存になるリスクがある。
これは日本のアルコール依存リスクより低い。

アルコールやたばこが合法であっても国民の多くは利用しない。それは正しい教育や供給環境を整えれば社会が破綻することもない。

全く使う人がいなければ一番いいが、悪人はいるんだよね。
違法に売る人たちは根絶することは難しい。

違法行為を行う反社会的集団が販売を続けることで、だれかれ構わず売るだろうし、ほかのハードドラッグを売りつけられたり、振り込み詐欺や窃盗など他の犯罪に巻き込まれるリスクもある。

全うな登録販売者に販売させることで、そういった部分クリアできる。税収をそれなりに設定(たばこのように)して、教育や社会保障、依存症対策に回せばいい。
また、広告や販売の規制をしっかり行う。
テレビ、ラジオ、SNS等広告禁止、販売店舗時間の規制、自動販売機の禁止、未成年で入りできない販売店舗のみ(日本のアルコールもそうすればいいのに)などなど

使用者に対しての罰則強化ではなく、登録販売者への罰則、罰金を高い水準で設定すればいい。

今後の違法な大麻使用者が変に増えてしまう事になっていく前に諸外国の失敗や新たな政策から学ぶ必要がある。

薬物政策についての研究から、エビデンスのある政策を!
https://crimrc.ryukoku.ac.jp/