出会いとつながり

薬物依存症のヒカリです。僕は15歳の頃からシンナーをはじめ23歳くらいから覚せい剤に手を染めました。そして薬物をやめられなくて3度刑務所に入りました。3度目の刑務所に入る前に自分でインターネットで弁護士を探していた時に、「薬物の治療をしながら弁護をする」という弁護士さんをみつけてすぐに電話をしました。初めは「少しでも刑がかるくなれるように」とよこしまな気持ちでいましたが、西谷弁護士とアパリの尾田さんの熱意に感化され治療をはじめようと思いました。そして、アパリと5年間、薬物の相談や支援をしてくれるということで契約しました。そして薬物治療の為に結のぞみ病院に入院しました。この精神科病院の入院は本当に辛い経験でしたが、西谷弁護士や病院での主治医である中元先生と尾田さんのサポートもあり何とか6ヶ月間の入院生活に耐えることができました。裁判の時も僕のために一生懸命に僕の弁護をしてくれた西谷弁護士、そして情状証人に立ってくれた尾田さんの情熱は忘れることができません。本当に心が許せる人たちでした。そして刑も決まりました。今、考
えればその出会いから僕の回復が始まったと思います。

そして、3度目の刑務所を出所してきました。刑務所の中で色々と出てからの自分の治療の生活設計を立てていました。出所して初めの一年は仕事をしながら毎週病院に通い週3日は自助グループに通っていましたが薬を止めて1年をすぎた頃に一人で薬を止めて行くのには限界がありました。そこで、木津川ダルクの施設長の加藤さんに相談し、月に一度二度の一泊二日での入寮を許してもらいました。僕の中で「ダルク」という施設は「絶対に俺は行かないぞ」と思っていた中間施設でした。それはなぜかというと刑務所で何度も「ダルク」のビデオを見せられた事もあり僕の中で拒否反応が出たからです。

しかし、自分の回復の中でこれ以上の回復の進歩はないと思い一泊二日で毎月泊まりに行けるよう加藤さんの配慮で泊まれるようになりました。
初めは「ダルクの生活ってどんな所なんやろう?」と内心ドキドキしていましたが、いざ一緒に生活をさせてもらうと割とすんなり仲間の輪の中に入ることができました。僕が1番驚いた事はダルクの中にある生活の一つ一つにプログラムがあると言う事でした。朝起きてご飯を食べる。ミーティングをする。ご飯の買い出しに行く、施設の中で料理の用意をする、調理をする、みんなで掃除をする、これらの作業もプログラムの中の一環という事に驚きました。僕は家ではほとんどの事を自分ですることがなく、ほとんどがパートナー任せの生活をしていたので施設での生活にとてもいい影響を受けました。「自分でできる事をする」この当たり前なことができていない自分に気づき少し恥ずかしくもなりました。回復するにはまずは基盤となる「普通の生活(自立した生活)」が必要なのだなと感じました。

ミーティングは午前と午後に2回あります。自分の事を話すのは少し恥ずかしかったり、初めのうちは心を開くことができずにいましたが、何度目かのミーティングで初めて心を開くことができた時には身体(心)が軽くなった事を今でも覚えています。そして、話すだけでは無く人の話を聞くのも大事だと言う事を教えてもらいました。
スタッフの方とのコミュニケーションも僕の中では驚きでした。やっと一息ついた休憩時間にもかかわらず、親身になって僕の話を聞いてくれ的確なアドバイスをくれた事で僕の中にあった悩みが確実に小さくなって行くのを感じました。「話を聞いてくれて共感してくれる」
事だけで嬉しくなります。
施設での生活をしていると、今まで自分がしていた生活は間違っていたことに気がつきました。施設に泊まると本当に生まれ変わったような気持ちになります。それはなぜかというと、 何時も仲が悪い父親に「仕事休ましてもらって施設に行かしてくれてありがとう」と、言えるようになったからです。何時もは僕の面倒見てくれるのが当たり前だと思っていたことが間違いだと気づきこころから「ありがとう」と、言えるようになりました。ありがとうと言った僕の顔を不思議そうに見ていた父親の顔は今でもよく覚えています。
施設の生活も良いことばかりではありません。気の合わない人やイラつく人など本当に色々な人がいますが、僕達薬物依存症の人は決して1人では回復ができない事を教えてくれました。「この人合わんわ」「腹たつから近寄らんとこう」といった気持ちは全て自分の中に問題があることにも気づかせてくれました。まず、自分の生活を元に戻し内面を変えていくことが大事だと教えてもらいました。ダルクに行くまではそんな事を思った事は一度もありませんでした。そして僕に仕事をしながらでも回復ができるという自信を持たせてもらいました。本当に心から感謝しています。

西谷弁護士とも今も交流を持っています。人と人の繋がりって本当に大事な事だと学ばしてもらいました。西谷弁護士、アパリの尾田さん 木津川ダルクの加藤さん この3人の方がいなければ僕の回復はなかったと思います。これからもダルクに通わせてもらいながら仕事に行き1日でも多くのクリーンを続けていこうと思っています。

ひかり

アパリ東京本部ニュースレターNo.85